北陸電「活断層ではない」報告書-研究者ら「科学的根拠乏しい」
志賀原子力発電所1号機(石川県志賀町)敷地直下の「S-1断層」について、調査を続けていた北陸電力が昨年12月、「活断層ではない」とする最終報告書を原子力規制委員会に提出しました。「県民の不安に応えない、科学的根拠に乏しい調査だ」と、研究者や住民から批判の声が上がっています。
「S-1断層」は、複数の研究者から活断層ではないかと指摘され、北陸電力も再調査せざるを得なかったものです。ところが最終報告は、溝を掘って調べるトレンチ調査や採取した試料分析から、大きく動いた形跡はないとして、活断層の基準とする13万~12万年前以降の活動を否定。敷地内の他の7本の断層についても、鉱物組成の分析などから将来活動する可能性はないとしました。
幅広い分析いる-福浦断層の活動性否定できず
これでは「活動性を科学的に否定したことにはならない」と、志賀原発周辺で活断層調査を続けている新潟大学の立石雅昭名誉教授(地質学)は批判します。「敷地内の断層は能登半島の成り立ちや現在の地殻変動の状況をふまえ幅広い視点で分析しなければならない。S-1は深さ300メートルに達する破断面であり、断層運動によってできたのは明らか。北陸電力は断層の存在を認めた上で、その上に載る新しい地層のずれと変位・変形がどこまで及んでいるかを検討する必要がある」と指摘します。
北陸電力は、原発の東1.4キロにある「福浦(ふくら)断層」については、「約13万~12万年前以降の活動が否定できず」とし、今回初めて断層の活動性を認めました。しかし、耐震基準以上の設計だから、「安全性に問題はない」と強弁しています。
立石氏は、「現在の調査・研究の到達点で言えば、地表に痕跡を残す地震の規模はマグニチュード(M)7.2以上とされている。北陸電力はM7.2を想定して、『安全性に問題はない』論拠を示すべきだ」と批判し、福浦断層をはじめ、原発周辺の断層と敷地内の断層が連動して動く危険性を指摘します。
調査能力がない-規制委は納得できる調査を
原子力規制委員会は最終報告を受けて、有識者らで構成する調査団を派遣する計画です。調査の結果、敷地内の断層が「耐震設計上考慮すべき活断層」と評価されれば、1号機の再稼働は難しくなり、廃炉を迫られる可能性も高まります。
原発問題住民運動石川県連絡センター・児玉一八事務局長は、「北陸電力は科学的で説得力のあるデータがないのに、『活断層ではない』と主張しているにすぎない。調査する体制も能力もないことを如実に示した。原子力規制委員会は、科学的で国民の納得が得られる調査を行うべきだ。石川県も県民の生命と安全を守る責任を発揮し、独自調査をすべきだ」と語ります。